「あ、あれは本当に悪かったよ!俺も、遊び半分だったんだ。」
「遊び半分だったら、相手を傷つけていい理由になるの?」
「それは…。ごめん。俺、てっきり皆が楽しんでくれてるのかと思ってて。湖川が傷ついてるなんて、知らなかったんだ。」

何をどう見たら、そう見えるのか不思議だ。

「でも、知らなかったでは、済まされないよな。陽芽にも酷く怒られて、これでも反省してるんだよ。」
「本当に?」
「ああ。湖川にも後でちゃんと謝ろうと思ってる。」
「そう。」

本田くんにしては珍しい。表情から立ち振る舞いまで、しゅんとしていて、本当に反省しているのだということが見て分かった。

「分かった。それなら許す。」
「本当か!?じゃあ、一緒に帰ってくれるか!?」
「うん、じゃあ一緒に──」
「か〜けるくんっ!」

僕が席を立ち上がろうとした瞬間、教室の扉付近から、陽芽さんの声が聞こえてきた。

「お陽芽ぇ!!どうしてここに!?ミスコンの活動は!?」
「思ったよりも早目に終わっちゃった!だから一緒に帰れるよ。」

その瞬間、本田くんが目を輝かせた。

「マジで!?やっほ〜!!ってことで蛍貴!やっぱり俺はお陽芽と帰るから!じゃあな!!」

そう言うと本田くんは、全力疾走で陽芽さんのところへ向かった。

「あ、桜ケーキくん、もしかして本田くんと一緒に帰るつもりだった?それなら私は──」
「俺はお陽芽がいいです!!」
「でも桜ケーキくんの方が先に…。」
「いいよ。2人で帰って。僕は他にもすることがあるから。」
「そうなの?じゃあ、遠慮なく。」
「またな!蛍貴!ちゃんと謝っとくからな!」
「うん、また明日。」

僕は2人に手を振る。
特にすることなど無かったが、本田くんは僕より陽芽さんと一緒に帰った方が圧倒的に楽しそうだった為、僕は身を引いた。