『庇うなら、もっと上手く庇えよな。』

真島くんが教室を出る前に僕の耳元で囁(ささや)いた言葉が、放課後になってもまだ、頭の中で鳴り響いていた。
湖川さんの描いた絵が、クラスの男子から揶揄(からか)われて、それを助けようとした行いが、火に油を注ぐ行為となってしまった。
そんな中、真島くんはいとも簡単にその問題を解決してしまったのだ。

「はあ…。」

最近は色々なことが起こりすぎて、少し疲れた。
正確に言うと、僕自身には何も特別なことは起こっていなかったが、周りで様々な変化があった。
1番大きな変化は、真島くんの人気が急に無くなったことだ。
それまで真島くんは、持ち前のルックスとスペックの高さで、女子からとても人気があった。しかし、数日前、真島くんが過去に暴力事件を起こしたという噂が流れたことにより、今はほとんどの人が真島くんに近づこうとしない。
初めてその噂を聞いた時はとても驚いたけれど、僕はその噂を特に気にすることは無かった。
信じるとか、信じないとか、そういう問題ではない。正直、噂が本当か嘘かなんて、本人とその関係者以外は知りえないだろう。肝心なのは、現在の彼の姿なのだ。
あの噂の真相がどうであれ、今の真島くんが良い人なのなら、それで良いではないか。僕はそう思う。

「お〜!蛍貴!まだ残ってたのか!」

教室で自分の席に座り、考え事をしていると、本田くんが僕に声をかけた。