「どうしたの?」

更に近くにいた女の子がその子に声をかける。

「ちょっと、これ見て欲しいんだけど…。」

2人で1枚のチラシを除く。そして、明らかに2人の表情が曇った。

「えーっとこれは…、」
「な、なんというか、逆に芸術的だね。ははは。」
「こういうのが1枚あってもいいかもしれないしね…ははははは。」

一体どうしたと言うのだろう。まあ、私には関係の無いことだ。
そう思い、再び教室を出ようとすると…。

「何だよそれ!面白そう!見せろよ!!」

教室の隅で仕事をサボり、細長く丸めた新聞で剣を作って振り回していた本田くんが女の子達に近づき、持っていたチラシを横取りした。
そして、そのチラシを見るや否や、お腹を抱えて大笑いした。

「うわぁ〜!やっべぇこの絵!見ろよ!あははははははは!絵が下手にしてもほどがあるだろ〜!ほら!皆見ろ!」

本田くんが教壇の上に立ち、チラシを皆の方へ向けた。
その瞬間、時が止まったかのような衝撃を受けた。
それは、私が2時間かけて作成したチラシだったのだ。

「確かに!ヤバぁ〜!」
「誰だよこれ書いた奴!挙手しろよ、挙手〜。」

主に男子達が騒ぎ出した。

「俺が書いた方がまだマシだわ!ってかさ、これ、回収箱の1番上にあったよな?」

本田くんが女の子達に聞き、女の子達が無言で頷いた。

「ってことは、湖川じゃね?」

突然名前を呼ばれて、私は固まる。