「で、でも、あの、私、とても絵が下手で…。」
「全っっ然問題ないよ!!」
「皆、そんな本格的な物を作ってるわけじゃないから。」
「湖川さんは舞台の主役もあるから大変かもしれないけど、チラシはどうしてもバリエーション豊富な方が良いの。」
「だから、本当に、お願いします!」

女の子達は、再び私に頭を下げた。
どうするべきか…。正直、私の描いたチラシでは、お客さんが寄ってこないどころか、逃げていってしまうかもしれない。そう考えると、断った方が良いのだと思うが、しかし、完全に断れる雰囲気ではない。それに、皆が頑張ってチラシを作っているのに、私だけ作らないというのも気が進まない。

「わ、分かった。」

どうしようもなく、そう返事をしてしまった。
絵に関しては、家でフリー素材を組み合わせた画像を印刷して、紙に写そう。時間はかかるが、下手な絵を皆に(さら)してしまうよりは、遥かにマシだ。
家に帰ってから楽なように、チラシの構成くらいは簡単に考えておこう。

「ありがとう〜!」
「じゃあ、提出は今日の放課後までだから。宜しくね。」
「うん。」

そう言うと、2人は仕事があるのか、教室から出ていった。

今日の放課後か。うん、今日の放課後。今日の…

「今日の放課後!?」

驚き過ぎて、つい思っていたことが口に出てしまった。私は大人しいと思われている方であると思うから、誰かに聞かれていなかったら心配だ。
聞かれていないことを願うばかりであったが…、

「どうした?」

たまたま近くを通りかかった真島くんに聞かれてしまっていたようだ。