「そんなこと言っていいのかよ。」
「良いんです。だって──」
「俺が君を突然殴るかもしれないんだぞ!」
「それは絶対にありません。」
「何でそんなこと、言い切れるんだよ。」
「真島くんを信じているからです。」

そう。私は彼を信じている。もう一生、他人を信じることはできないと思っていたけれど、気がついたら、私はちゃんと、人を信じることができるようになっていた。

「何で、俺のことなんて信じられるんだよ…。誰も信じてくれなかったのに…。」
「私だけではないと思います。ももちゃんも陽芽も、お兄ちゃんも佐倉くんも本田くんも、きっと真島くんのことを信じていると思います。」

真島くんは、鼻で笑った。

「良い仲間を持ったな。」
「私もそう思います。」
「俺なんかの味方をしてたら、周りから変な目で見られるかもしれないのに。それでも良いのか?」
「問題ありません。」

私は普通の女の子のようにできない。そもそもその時点で、周りからは異質な目で見られているかもしれないから、これ以上周りにどう思われようが、あまり大きなダメージはない。
それに、分かっている人に分かっていてもらえれば、他の人からどう思われようと、関係ないと私は思う。

「変な奴。」
「よく言われます。」

真島くんが薄ら微笑(ほほえ)んだのが分かった。

「パートナーが君で良かった。」

まさか彼からそのような言葉が出てくるとは思っていなかった。思わず彼の顔を見てみたが、視線は合わなかった。
そういえば、彼と視線が合うことは、ほとんど無い。きっと、お互いに他人の目を見て話すことが苦手なのだと思う。