「藍なら大丈夫だと思うけどなぁ。」
「何を根拠にそう思うの？」
「う〜ん、根拠は無いけど、双子の勘！ってことで、私は帰るね！懸くんが靴箱の前で待ってるからさ！」
「あ、うん。じゃあ、また家で。」

私がそう言うと、陽芽はスキップをしながら、去っていった。
陽芽は割といつでも機嫌が良さそうだけれど、今は特に機嫌が良さそうだ。きっと、陽芽と本田くんは両想いなのだと思う。
パートナーと両想いだなんて、羨ましい。私と真島くんは、不確かな関係だから。お互いに、きっと好きでも嫌いでもないのだと思う。
でも、少なくもと私は、真島くんを特別な存在だと思っている。

「湖川さん。」

ぼーっと考えていると、教室から出てきた佐倉くんに声をかけられた。

「あ、佐倉くん。今、帰るところですか？」
「そうだよ。日直だったから、少し遅くなっちゃって。」

彼と話す時は、いつだって緊張している。でも、今はいつも以上に緊張している。というか、上手く目線を合わせられない。
きっと彼の顔を直視したら、この前、彼の前で倒れてしまった時の出来事を思い出してしまうから…。

「じゃあ、僕は帰るね。」
「あ、あの、待ってください…！」

この前の反省文を書いている時から、ぎこちなさを感じていた。きっと、お互いにこの前のことが気まずいのだと思う。
でも、このまま放っておいたら、二度と彼と普通に話せない気がして…。
それはとても寂しいから、私は彼を呼び止めた。

「あの…、これから時間はありますか…？」
「あるけど…。」
「話したいことがあります。」
「分かった。もう教室には誰もいないから、一旦教室に戻ろうか。」
「はい。」