「こら!懸くん、ももちゃんを傷つけたら、承知しないんだからね!!」
「傷つけてないしー。俺、本当のこと言っただけだしー。」
「それが良くないって言ってるの!」
「私…、辛かったんだから〜…!もう、本田くんとやるくらいなら、佐倉くんの方がまだ100倍マシだった!」

マシ…というのは、…さりげなく(けな)されている気がしなくもない。

「何でもいいけど、俺はもう書き終わったから。」

真島くんが席を立ち上がって、言った。

「広大くん、もう書き終わったの!?」
「ああ。他の生徒を待たせるわけにはいかないからな。」

そうだった。僕達は今、自習室で反省文を書かされているのだが、教室では、週に1度のロングホームルームが行われている。
来月に行われる文化祭の出し物を決める会議があるそうだが、僕達が反省文を書き終わるまでは、クラス全員が自習をするそうだ。

「君達も早く書いた方がいいぞ。じゃあ。」

真島くんは、そう言うと、教室を出ていった。

「まさか広大くんがもう書き終わっているなんて。」

陽芽さんが驚いているが、実は僕も数分前に反省文を書き終わっていた。しかし、皆が書いている中で、1人だけ『書き終わった。』ということが、気まずく、なかなか言い出せなかったのだ。でも、いつまでもここでじっとしているのも疲れてしまいそうだから、そろそろ教室に戻ろうと思う。