「あぁ…もう…。どうして僕はいつも…。」

何一つ器用にこなせない。
そもそも、『ずっと一緒にいて欲しい』だなんて、一歩間違えたら、愛の告白だ。
湖川さんに落ち着いてもらう為だけに言ったつもりだが、もしかしたら、僕は告白をしてしまったのかもしれない。そう考えたら、更に恥ずかしい。
普段は冷静に物事を考えられる方だが、彼女が関わると、いつも自分でも予想外な行動や発言をしてしまう。
これが、“恋をする”ということなのだろうか。
だとしたら、恋愛は難し過ぎる。
なんにせよ、僕は先程してしまった恥ずかしい行いを全て消し去ってしまいたい。

「…ん。」

その時、彼女の瞼が少しだけ動いた。

「湖川さん…!?」

ゆっくりと目が開く。

「湖川さん…!!」
「…ん、あ、えっと…佐倉くん…?」
「良かった。」

意識はまだはっきりしていないみたいだが、少しの会話ならできそうだ。

「あの…私…。」
「さっき、倒れたんだよ。ここまでは僕が運んできたんだ。」
「倒れた…?」
「うん。」
「ごめんなさい。少し今は頭が働かなくて…、あまり思い出せないみたいです。」
「ゆっくり思い出せばいいよ。」