「…ということだ。」
「なるほど〜。(かける)くんがねぇ。後でしっかりお仕置きしておかなくちゃ!!」

封筒が入れ替わったということは、俺のパートナーは、佐倉か本田のどちらかとこの授業を行っているということだ。
彼女は、男性恐怖症だと言っていた。軽度とはいえ、本田はあまり得意なタイプではないだろう。だから、彼女が佐倉とペアになっていることを願うばかりだ。
でも…、佐倉と彼女が一緒にいるのは、少し心配もある。彼は彼女のことが好きだと言っていた。
彼女も佐倉は話やすい存在らしいし…。もしその恋が実ってしまったら、俺は彼女と婚約できなくなる。そうしたら、俺がこの高校に入った意味が…なんて、自分のことばかり考えるのは良くない。皆が幸せになれば良いと思う。

「あ〜、懸くん、どっちと一緒になってても困るなあ。あの子は私じゃないと手に負えないから。」

湖川陽芽が嘆いているが、惚気(のろけ)のようにも聞こえる。

「君と本田は仲が良いんだな。」
「うん。懸くんがどう思っているかは知らないけど、仲は良い方だと思うよ!」

本田は湖川陽芽のことを、『お陽芽』と呼んでいる。きっと彼も、彼女に好感を持っているのだと思う。
お互いに仲が良いと宣言できる関係。
主観的な意見だが、この2人は理想のパートナーなのだと感じる。

「そうか。それは良いな。」
「そう?広大くんと藍は仲が悪いの?」
「いや、そういうわけではないが。」

少なくとも、本田と湖川陽芽ほど相性が良いとは思えない。どうして彼女のパートナーが俺なのだろうと思ったことも何度かある。俺なんかより、相応しい人物が他にもいるはずなのに。
もしかしたら、俺達は相性ランキング最下位で入学したのかもしれない。