「佐倉、一緒に行かないか?」

歩いていると、真島くんから声をかけられた。

「あ、うん。」

遊園地へ遊びに行って以来、僕達はよく一緒にいるようになった。真島くんは、クールで無口だが、話してみると、とても優しいくて人想いであることが分かった。

「家庭科の授業も研究材料に使うって、ちょっと都合が良すぎねえか?」
「確かに、少し強引な気もする。」
「心配だ。」
「家庭科は苦手なの?」
「いや、俺はそこまででもないが。彼女がな。意外に不器用なところがあるみたいだから。」
「そうなんだ。」

やはり、パートナーとして一緒にいると、少しずつでも相手のことが分かってくるのかもしれない。
湖川さんと真島くんは、『形だけの関係』だと言っていたけれど、やはり、『形だけ』でいられるはずがない。少なくとも、出会った当初と比べれば、かなり仲良くなったのだと思う。

「やっぱり真島くんは──」
「蛍貴〜〜〜〜〜!!!!!」

『真島くんは湖川さんと相性が良いのだと思う。』と言おうとした時、後方から、勢いの良い本田くんの声が聞こえてきた。
振り返ると、猛スピードでこちらへ走ってきている。

「ちょっと、本田くん、止まっ…!!」

勢い余った本田くんはそのまま僕に正面から体当たりをした。
僕はバランスを崩し、そのまま尻もちをつくように転んだ。僕と真島くんと本田くん、3人の封筒が宙に舞う。