「クラスの人達は、僕達が恋人同士だと勘違いしているみたいだよ。」
「そう。」
「嫌じゃないの?」
「別に。あれこれ噂されることには、慣れてるから。」

確かに、真島くんは、何でもできる器用で格好良い人間だ。小中学校の頃も、きっと良い噂を沢山されてきたのだろう。

「そうか。そういえば、真島くんは普段から良い噂がクラス中に流れているね。」
「そうじゃない。」
「え?」
「いや、何でもない。」

気のせいかもしれないが、『そうじゃない。』といった真島くんが、少しだけ悲しそうに見えた気がする。
僕にはオーラというものが見えないけれど、少し、いつもと雰囲気が違っていた。

「俺は佐倉が羨ましい。」
「えっ…?」

僕が、羨ましい…?天地がひっくり返っても納得できない。真島くんは、ルックスも頭も性格も、全て優れている。僕なんかを羨ましく思う理由など無いはずなのに。

「どうして?」
「佐倉は、何色にも染まらなそうな気がするから。」
「自分をしっかり持っている気がする。」
「そんなことないよ。」

絶対に無い。自分をしっかり持っているのは真島くんの方だ。真島くんは、僕のように感情を殺して何も考えずただ命令に従うなどということがあるとは思えない。