「では、佐倉くん、残り物の私たちで、一緒に乗りませんか…?」

湖川さんが申し訳なさそうに言った。

「そ、そうだね。」

何故、こんなにも胸が高鳴るのだろう。
分からないけれど、多分…。

「蛍くん…。」

裕さんが他の誰かに聞こえないような声で、僕の耳元で囁いた。

「頑張って。」
「そんなことを言われましても、何をどう頑張るんですか…?」
「本当は分かってる癖に。」
「えっ…?」
「とにかく、僕は本当は高所恐怖症なんだよ。それでも君と藍にもっと仲良くなって欲しいから、観覧車に乗ろうって言ったの。この意味、分かるよね。」

分からない。いや…本当は分かっているけれど…きっとそれを認めたくないんだ。
でも、裕さんから、過去の出来事を聞いて、僕もそろそろこのままではいけないと思った。
この気持ちを、認めないままではいられない。この感情を貫き通すのか、諦めるのかは分からないけれど、きっと、先ずは認めなければいけない。