「どうしてそんなことが分かるんですか?」
「ずっと一緒にいたから。」

なるほど。説得力がある。

「藍が最近、少し明るくなってきたのは、きっと蛍くんの影響が強いんじゃないかな。悔しいけどね。」

きっと、そんなことはない。僕と湖川さんが出会うより、裕さんが戻ってきてくれた事の方が、湖川さんにとっては大切で、真島くんの方が湖川さんに影響を与えているのだと思う。
でも、湖川さんのことを昔から知っている裕さんが、そう言うなら、僕も少しは湖川さんに影響を与えているのかもしれない。
もしそうだったら…とても嬉しい。

「あ!こんな長話をしている間に、皆がお化け屋敷を出てきたみたいだね。」

前方を見ると、4人の男女がこちらに向かって歩いてきている。

「最後に蛍くんに言っておきたいんだけど。」
「何ですか?」
「さっき、お化け屋敷での藍と真島くんを見て分かったと思うけど、藍を好きになるのは、とても辛いんだ。」
「ですから、僕は別に湖川さんにそういう感情は──」
「気づかなかったの?蛍くん、あの時、凄く悲しそうな顔をしていたよ。」

そんな…はずはない。それなのに、確かに先程、2人が一緒にいるところを見て、何故か少し嫌だった。

「でも、切なそうな顔を、彼女の前では絶対にしては駄目だよ。必要以上に藍に心配事をかけたくないから。それだけは約束して欲しい。」
「分かりました。」

元々、嘘をつくのは得意な方だ。それくらいならできるだろう。