「うわぁぁぁ!!!で、出た〜〜〜!!!」

そして何故か、お化け役の人は、そのまま逃げ出してしまった。

「あははははははは!楽しい!」

もう、どちらがお化けなのだか分からない。まさか、お化け屋敷をこんな風に楽しむ人がいたなんて、思いもよらなかった。

「それにしても、どうしてあのお化けは後ろを向いていたんでしょうか?」

普通に考えたら、次に来た人を驚かせる為に、僕達に背を向けることは無いだろうと思う。

「陽芽に見とれていたか、前を歩いているカップルが気になったのか、どっちかだな。」
「前を歩いているカップル…?」
「ほら、よく見てよ。」

そう言うと、裕さんはその場で立ち止まった。

「あの2人、腕組んでるよ。」

裕さんが見つめている視線の先には、湖川さんと真島くんがいた。
胸が締め付けられる。
2人を見ていると、手を繋いでいた噂も、きっと本当なのだろうと信じられる。信じられたからこそ、分かったことがある。
きっと僕は、あの噂を、信じたくなかったんだ…。

「蛍くん、君は今とても辛そうな顔をしているよ。」

それなら、裕さんだって…。

「どうして…。どうして裕さんは、湖川さんが好きだとはっきり言えるんですか?湖川さんには、真島くんという完璧なパートナーがいるのに…。」