「広くんは藍のパートナーなんだから、藍の隣に座ってよ。」
「え?」
「僕はここで蛍くんと2人きりで楽しむから〜!」
「分かりました。」

そう言って、真島くんが湖川さんの隣に座った。
僕はよく、人から『分からない』と言われるが、僕にとっては、裕さんの方がもっと分からない。ニコニコしていると思えば、急に真剣な表情をすることがあるし、逆に真剣な表情をしているかと思いきや、突然ニコニコし出すこともある。

「蛍くん?どうしたの、そんなに驚いたような顔をして。」
「あ、いや、えっと…。」
「やっぱり僕が藍の隣の席に座ると思った?」

裕さんが皆に聞こえないように、僕の耳元で囁いた。

「あ、はい。」
「今日はね、ずーっと蛍くんと一緒にいることに決めたの。」
「僕と一緒に?」
「うん。ほら、遊園地のアトラクションって、大体2人1組でしょ?だから、全部蛍くんと僕がペアだからね。いい?」

良いも何も、裕さんはそれで良いのか不思議だ。

「僕は大丈夫ですけど、裕さんは良いんですか…?」
「良いに決まってるでしょ!蛍くんと仲良くしたいんだもん。」
「何か企んでませんか?」
「酷〜い。けど、蛍くん、鋭〜い。」

やはり、何かを企んでいるのか。

「何を企んでいるのですか?」
僕が尋ねると、裕さんは飛び切りの笑顔で、ニカッと笑った。

「ナ・イ・ショ!」

こうして友達と何処かへ出かけること経験は初めてだ。だから、素直にとても楽しみに感じている。
けれど…、なんだか普通では終わらなそうで、緊張する。
そんなことを考えながら、僕は裕さんに苦笑いを返した。