どうして陽芽さんがここにいるのだろう。パートナーである本田くんが、テストで30点以下を取ったから、研究所の手伝いをしているはずじゃ…。
それに、噂によると、研究所の手伝いは、1週間に30点以下を取った教科の数の日数分しなくてはならないらしい。本田くんは全ての教科で30点以下を取ったから、休みは無いはずだ。

「どうして陽芽がここに!?もしかして、ドッペルゲンガー!?僕、もうすぐ死ぬかも…!!」

裕さんがふらふらとその場を右往左往した。

「ドッペルゲンガーじゃないよ!本物の湖川陽芽!今日は研究所の人に頼んで、私だけお休みにしてもらったの。」
「え…!?休み!?待って、僕が高校に通っていた時、友達が毎年30点以下を取って手伝いをさせられてたんだけど、頼んだところで絶っっ対に休ませてもらえてなかったよ!?」
「そうなの?お願いしたら一発OKだったよ??」

陽芽さんがそう言うと、裕さんが頭を抱えた。

「美少女の人生はイージーモードというのは、こういうことなのか…。」
「何言ってるの?裕くん。裕くんの通ってた時が、ブラック過ぎだっただけじゃない?」

陽芽さんはそう言っているが、たった1年で方針が変わるとは考えにくい。きっと、陽芽さんが特別扱いされたというのが正しいのだろう。

「それにしても、どうしてこの場所が分かったの?」

湖川さんが尋ねた。

「実は藍を尾行して来たの!皆がそろったら登場しようと思って、さっきまで隠れてたんだよ。」
「どうしてそんなこと。言ってくれれば一緒に行ったのに。」
「それじゃあ面白くないでしょ!皆をびっくりさせようと思ったの!ねぇ?びっくりした!?」
「うん、とっても。」
「なんだか藍が言うと、信憑性(しんぴょうせい)が薄いなぁ。」

確かに。と思ったが、さすがにこの状況に驚かないことはないだろうから、きっと彼女も彼女なりに驚いているのだと思う。