「閉じ込められたって、どういうことだよ!?」
「分からない。けど、おそらく、僕達がここの整理をしていることを知らない先生が閉めてしまったんだと思う。」
「どうするんだ?もう1限が始まってしまうぞ。」

HRには出なくて良いといわれたが、さすがに1限には出なくてはならない。一刻も早く、ここを抜け出さなければ…。

「大きい声を出したり、扉を叩いてみる?」
「それで誰かに気づいてもらえればいいが、人気は無さそうだぞ。体育館を使う授業も2限だと先生が言っていたし。」
「だよね…。」

暫くここには誰もこなそうだ…。

あ、そういえば真島くん、強いんだよね?」
「強いとは言っていない。剣道が5段なだけだが。まさか…、」
「この扉、壊せたりしない?」

ダメ元聞いてみた。

「さすがに無理だ。それに俺は、扉を傷つけるような野蛮(やばん)なことはしたくない。1限が始まれば、俺達がいないことに気がついた教師が探しに来るだろ。」
「だといいんだけど…。確か1限は歴史だ。」
「歴史…。それは望みが薄そうだな。」

歴史の授業は、80歳のおじいさんが担当している。そのおじいさんは、歴史について語り出すと、授業終了まで他のことはそっちのけだし、失礼だが、かなりボケているから、僕達がいないことに気づくとは思えない。

「じゃあ、2限が始まるまで、俺達はここにいるしかないというわけか。」
「そうみたいだね…。」

最悪だ。ここは完全な密閉空間で、窓も無ければエアコンも無い。7月の上旬とはいえ、最近はだんだんと暑くなってきている。そんな時に、こんな場所へ閉じ込められてしまうなんて。
それに、相手は真島くんだ。僕が勝手に感じているだけであるかもしれないが、彼といるのは少し気まずい。