真島くんとの距離が近づいて、指先と指先が触れる。そして、真島くんは、ゆっくりと私の手を握った。
高鳴る鼓動を抑えられなくて、これは恋なのではないかと、勘違いしてしまいそうだ。

「大丈夫…か…?」
「…はい。」

真島くんの手は、大きくて温かい。そして、やはり優しい。
強くは握れなくて、ほとんど触れているだけ。それでも、私にとっては大きな進歩だ。

「…ごめん。」
「私は大丈夫ですよ。」
「そうじゃなくて。今朝のこと。君を不安にさせるようなことを言ってしまった。」
「それは、いいんですよ。私が勝手に悲観的に捉えてしまっただけですから。」
「いや、それでも俺は謝らなければならない。」

謝らなくても良いと言おうとしたが、やめた。
真島くんはとても礼儀正しく、きちんとしていることが、今まで一緒にいて分かった。きっと、私が謝らないでと言ったところで、真島くんの気は済まないだろう。

「これからも、不用意な言葉で君を傷つけるかもしれない。でも、これだけは覚えていて欲しい。俺は、君が嫌いではない。」
「分かりました。覚えておきます。」
「ん。」

そう言うと、真島くんは私の手を離した。見ると、もう私の家の前まで来ていた。

「じゃあ、また学校で。今日の復習、ちゃんとしろよ。」
「はい。」

そのまま真島くんは、私に背を向けて、来た道を戻って行った。
握られていた手がまだ熱い。
何だか少し恥ずかしいけれど、今日は彼のことを沢山知ることができて、嬉しく感じた。