ぶつかってしまいそうな至近距離まで来た時、彼の手が止まり、そっと私の手から離れた。
真島くんと目が合う。
無表情だけれど、真剣で鋭いその眼差しに圧倒されて、目を逸らしてはいけない気がした。
そして、その状態のまま暫くすると、彼は私と距離を取り、先程と同じような位置関係に戻った。

「ごめん。」
「えっ?」
「君は男性恐怖症なのに、手を掴んでしまった。」
「いえ、いいんですよ。克服したいと思っているのです。少しずつでも。」
「そうか。」

ほら、そういうところが優しい。そうやって、さり気なく私のことを気遣ってくれている。
でも、彼はいつも自分のことを悪人のように話す。それには、何か意味があるのだろうか。

「君が克服できるように努力するなら、俺も君のパートナーとしてふさわしい人間になれるように頑張る…かな。」
「パートナーとして、ふさわしい人…?」
「ああ。例えば…、手…繋いでみるか…?」
「へっ…!?あ、えっと、それは…。」
「嫌か…?」

正直、私にとってはとてもハードルが高い。でも、そんなことを言って、自分には無理だと決めつけているだけでは、変われない。何も克服できない。

「怖くなったら、勝手に離せばいいから。…一瞬だけでも…。」