パートナーは、先端技術を駆使(くし)し、AIが膨大なデータを分析した結果、選び出された最高の相性の相手だ。
僕にとっての最高の相性の相手は彼女ではなくて、彼女にとっての最高の相性の相手も僕ではなかった。
もし、相性なんて関係なく、全く別の形で彼女と出会っていたのなら、僕達の関係は今のはまた違った形であったのだろうか。
いや、そんなことを考える意味は無い。

「佐倉くんは、よく分からないです。」

彼女は、僕と目を合わせないまま、真っ直ぐに前を見つめて、そう言った。

「えっ?」
「何を考えているのか。よく分かりません。」
「何も考えていないのかもしれない。」
「そんなわけないですよ。」
「そうかな。」

そんなわけはないだろうが、そんなことがあるのかもしれない。
僕は彼女に出会う前、いつだって、ロボットのように行動していたのだから。

「でも、良い人だということは、分かりました。」
「へえ。分からないよ。とんでもない悪人かもしれない。」
「悪人が、荷物を全部持ってくれるとは思えません。」
「それは、善意じゃなくて、裕さんが怖いからという理由だけかもしれないよ。」
「そんなことは無いですよ。」

僕は『良い人』ではない。『都合の良い人』なのだ。
しかし、彼女から、『良い人』だと言われたことが嬉しくて、僕は彼女から目を逸らした。