九羊の一毛




「玄くん!」


駅前の広場。来るのはちょっと久しぶりだった。
彼の姿を見つけるや否や、私は我慢できずに駆け出す。


「羊ちゃん――わっ、」


人目もはばからず、思い切り抱き着いた。それを優しく受け止めた彼が、私の頭を撫でる。


「……久しぶり。会いたかった」


耳元に落ちた言葉に、彼の腕の中で何度も頷く。

三年生になってから、彼と会える頻度がぐんと減った。クラスが違うというのももちろんそうだったけれど、特に夏休み以降は勉強一色だったから、まとまった時間を取って会うことが少なくて。

寂しかった。会いたかった。でもそれは彼だって同じ。
私たちは今ちゃんとやらなければいけないことがあって、それは将来のための大事なこと。だから辛くても我慢した。


「玄くん……」

「うん?」

「会いたかったあ……」


彼の顔を見ると安心して、ぼろぼろ泣けてきてしまった。
玄くんはちょっとびっくりした様子で目を見開くと、眉尻を下げて笑う。


「俺も。ずーっと会いたかった……」

「うんっ……」

「……ほんと、俺の彼女が可愛くて困っちゃうね」


言いつつ、彼が窘めるように私の目尻にキスを落とした。
その唇が額に、頬に、と降ってきてくすぐったい。身を捩ると、「こら」と抱きすくめられる。


「まだ充電し足りない。はー……やっと全部終わった、長かった……」