九羊の一毛



私たちは歩いていく。その道はもしかしたら、途方もない茨道かもしれない。はたまた、平坦な一本道かもしれない。
頑張る必要なんてないかもしれないし、二人で力を合わせても足りないくらい頑張らなきゃいけないかもしれない。

彼だって私だって、きっとこれから、沢山知らない自分を見つけるだろう。そのたび不安になって、目を逸らしたくなる。お互いもっと好きになったり、時には嫌いになったりしてしまうかもしれない。

でも、それは沢山あるうちの一つにしか過ぎなくて。きっと取るに足らない些細なこと。何気ない日常のほんの一部。
きっと、かっこ良くても悪くても、可愛くてもみっともなくても、そんな日々を愛しいと思うよ。彼とこれから築いていく人生全部を、愛していきたいと思うよ。


『羊は俺にとっての太陽だから』


彼はそう言ったけれど、私には彼が眩しくて、太陽のように見えて仕方がないんだ。


「羊」


優しく柔らかく。微笑んで彼が呼ぶ。


「愛してる」


たとえ焼き焦がされてしまっても、命尽きてしまっても、それすら構わないと。目の前の太陽を見て、そう思った。


「私も、愛してるよ。玄」


だって私たち、死んでも一緒らしいからね。







Fin.