キミの世界で一番嫌いな人。





ドサッ───。


俺もそろそろ眠りに入りそうだったとき。


……ほら、言わんこっちゃない。

ソファーから落ちてる馬鹿がひとり。



「…俺の言ったとおりじゃん」



そっと起き上がって、抱きかかえた。


お姫様抱っこなんか初めてした。
それにやっぱりこいつ、軽すぎ。

まぁ女の子だから当たり前か……。



「…そんなに好きなの?」



ベッドに優しく下ろすと、チビの頬には涙の跡があって。


俺さ、頑張れとか言っちゃったけど。

頑張られたら嫌だとも思ってる。
そんなのチビにも妹ちゃんにも言えない。


だって頑張られたら、お前は藤城サンにとって良いヤツになっちゃうから。



「…やっぱずっと抱き締めてもらえば良かった」



そしたら俺だって、この子を抱き締めていい理由ができるから。


柔らかな頬に伝わる涙を優しく拭ってあげる。

この涙は俺のためじゃなく、あいつのためなんだろう。




「俺にしなよ、───…青葉ちゃん」




俺、初めて知ったよ。

本当に好きな女を前にすると、簡単に襲えないんだって。