ドアが閉められ、黒いスーツの男がこちらに向かって歩いてくる。

〈だ、誰だ…!〉
『あーあー、アンセム社の社長が他社の社長令嬢を襲うなんて、ニュースになったらあんたの地位も会社も終わりやろうな』
〈なんだって、!〉
『あんたの代表が悪事について全部バラしたで。麻薬密売も人身売買も全部な。
…代表の指示で、あんたが全部指揮を執ってたことも聞いたで』
〈そんな事実、私はただ代表の命令を、!〉

すらっとした身長、関西弁、それにオレンジ色のネクタイ。
他の時とおなじ、助けに来てくれたのは直樹だった。

橙「さっき代表は情報をネットで開示して謝罪した後自ら海に飛び込んだで。
あんたのことも記事に書いてあったけど、あんたは生きて一生罪を償うか、代表のもとへ一緒に逝くか、どっちか選べ」
〈なぜだ、!なぜそんなことをお前に!〉
橙「聞こえへんかったか?生きて一生罪を償うか、代表と一緒に死ぬかどっちかや!」
〈黙れ!なぜお前にその事を言われなきゃならない。お前には関係ないだろ、出てけ!〉
橙「関係あるわ!」

そう言い、直樹は社長を私から引き剥がして壁へうちつけた。

橙「俺の大事な女の子を襲うなんて
俺はお前を絶対に許さへんからな。
生きて一生頭下げるか、今までお前が売ってきた命のために死ね」

そう言って直樹が床へ叩きつける。
いつもの練習なんかよりも、尋常じゃない力がこもっていた。
社長は、直樹と私に怯えるように部屋を出た。
まだ脈を打つスピードが鳴り止まない。

「なお、き…」
橙「Sky…天咲、大丈夫?怪我は?」
「大丈夫、助けに来てくれてありがとう」
橙「当たり前や。俺は天咲を守るのが仕事やもん」

そう言って、優しく抱きしめてくれる。
安心させるように、何度も背中をさする直樹。