Sora Side

目が覚めると、知らない部屋にいた。
部屋の電気が消されており、テーブルにある間接照明が私を優しく照らす。
微かに手が痺れるが時計を見てみると、
先程から10分ほどしか経っていない。
まだ頭がぼーっとするが、残された理性が骨伝導時計を集音モードにしていた。

〈目が覚めたかね〉
「社長…」
〈手洗い真似をしてしまってすまなかった。
怪我などはしてないかい?〉
「私に、何を…?」
〈少し睡眠薬を嗅がせただけだよ。
体に害はないからね。安心して?〉
「あの、どうしてこんなこと…」
〈待ちきれなかったんだ、君が僕の愛人になるって言ったことを。
君の婚約者と代表を会わせてあげたんだ。
今頃2人は仕事の話で盛り上がってるさ。
私達もふたりで楽しもうじゃないか〉

そう言って、スーツを脱ぎ私に跨ってくる。
抵抗しようとしても、薬が効いていて力が入らない。

〈ふふ、力が入らないのか。かわいいね〉
「っ、!」

口を近づけてくる社長からは、強いアルコールの匂いがした。
確実に酔っていて、意識も朦朧としているのだろう。
それに、龍斗と楽しんでいると言ったあの代表はもう海の中だ。
私も早く脱出しなければ…。

〈なぜ抵抗する。
…僕のことが好きなんだろ?〉
「…、!やめ、てっ!」

このニタニタと笑った顔があの時のことを思い出させる。
全身が危険だと信号を送るように脈を打つのに、力が入らない。

ドンッ…!

突然強い音がして、暗い部屋に明かりが差し込む。