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橙「まだまだ手加減してんで。
本気出したら、俺の身一つでお前ら2人簡単に殺れるけど、このまま続けるか?」
〈…行くぞ、〉

「あの、あなたは…」
橙「…怪我、お大事にな」
「待って、!」
…………………

…あの時助けてくれたお兄さん。

「やっぱり直樹だったんだ」
橙「へ?天咲なんか言うた?」

ここへ来た時から薄々気づいていたけど。
あの時助けが来なかったらと思うと、今も少しだけ怖さを感じる。
だからあのお兄さんは私のヒーローだった。
その人はミリタリージャケットを羽織っていた。
ちょうど、こんなような形のもの。
直樹は服を沢山持っているから、この服を着ているのは初めて見た。

「直樹のこの服初めて見た」
橙「せやねん。久々に着たわぁ」
「えぇ、似合ってるからもっと着ればいいのに」
橙「…この服着てた時にな、女の子が悪い男に連れてかれそうになっとってさ。
慌てて助けたんやけど、名乗れるような明るい仕事をしてるんとちゃうからさ。
その女の子に大丈夫やった?ってかけ寄らんと、そのまま逃げてきてもうた。
その事を思い出してまうねん。これ着ると」

そうか、直樹はあの女の子が私だって気づいてなかったんだね。

橙「って俺天咲になんちゅう話してんねやろ。
ごめんな、忘れて忘れて!」
「ううん、その話聞けてよかった」
橙「…ほんま?」
「うん。直樹が助けに来なかったら、女の子はどんな目に遭ってたか分かんなかったんでしょ?
大人しくしろって言われたのに、女の子は1人突き飛ばしちゃったわけだし」
橙「そうそう、そのおかげで俺も楽に倒せたわ…って、え?」