橙「ホンマに、俺でよかったん?」
「何言ってんの!直樹が行きたいって言ったんじゃん!」
橙「せやけど…」

2人やとは思わんやん?ってごにょごにょ喋る直樹。
2人で格闘の練習する時は、死ぬほど強いのに。
実際、2人での練習でも勝った試しがない。
今も、直樹は私と戦う時は5割しか力を出していないらしい。
でも普段の彼は、子犬みたいなキュルキュルした目で、今だって俺でよかったん?って。
彼はまるで怪人二十面相だ。

橙「ここやで、」
「あ、ここか」

少し薄暗い高級感のある店へ入る。
今日は、私のオーダーメイドのスーツを取りに行く日だった。

〈では試しにご試着ください〉

入学式ぶりにスーツに袖を通す。
1度だけ家へ帰った時に、もしものためにスーツを持ち帰っていた。
でも紫ノ宮さんや流星が、仲間に入るなら俺らと同じものを着ろと言って、この店に連れてきてくれた。
直樹は何やら店内を物色していた。

「直樹ー、終わったよ」
橙「ほんま?」

シャーっと、試着室のカーテンを開けた。

橙「おお、かっこええやん」
「なんか、恥ずかしい笑」
橙「似合ってんで」

入学祝いで買ってもらったものとは違い、伸縮性があるストライプが入ったスーツだ。
いつも見慣れている、あのスーツに袖を通せたことが嬉しい。