健斗には妹がいた。児童養護施設に行って離されてからは疎遠になってしまったらしい。
ある以来で、連続強姦事件を起こした息子の過去を隠蔽した経理会社の社長を始末して欲しいというものがあった。
始末といっても殺す訳ではなく、脅して罪を認めさせ、自首や賠償をさせるという依頼もある。

その依頼は後者だったのだが、調べていくうちに健斗の妹が、その強姦事件に遭い、精神的ダメージを強く受けているという事実を知った。

赤「あの時の俺は…怒りに任せて息子と社長を…」

そう、依頼では罪を認めさせるだけで良かったはずなのに、

「撃っちまったんだよな」

健斗は小さく頷く。手が微かに震えていた。

赤「たまにあの二人が夢に出てくるんだ。まだ撃った感覚を忘れない。
天咲に、そんな思いをして欲しくないんだ」
「そうだったんだね、」
赤「それに、今天咲は銃口に少し恐れがある。
敵に向けられることなんてこの先何度もあるはずなのに、その度にトラウマを思い出すのも辛いだろ」

健斗の天咲への想いは、誰よりも大きいんだろう。
だからこそ、大切な人を守るためにも、危険にさらされて欲しくない気持ちも、痛いほど分かる。

「健斗、1回2人で話し合ってみたら?」
赤「天咲、2人で?」
「そう、分かり合えなくてもいい。
本気でぶつかり合うのも大切な事だよ」
赤「…天咲と気まずくなって、喋れなくなっちゃうとかないかな?」
「ふは、それ心配してたのかよ笑」
赤「だって、嫌じゃん喋れないの…」
「大丈夫だよ、その時は俺が仲裁するから。
ぶつかってこいよ」
赤「…分かった。
じゃあ、今日の夕飯の買い物行ってくるから、先帰ってて」

そう言って歩き出した健斗。
2人が仲直り出来ますように。