「天咲、ごめん!あの、怪我は?」
天咲「怪我なんて!ほら、この通り、してないよ?」
「ほんまに?よかったぁ、」

力が抜ける俺を横目にくすくすと笑う天咲。
そして桃田くんを待つ間、しばらくベンチに腰掛けることにした。

天咲「強いんだね、直樹って」
「んー、まあ一応流星の次ぐらいやけどな」
天咲「え、そんなに強かったの?」
「ふは、そんな驚かんでもええやんか笑」
天咲「だって、直樹が?」
「せやでー?強いねんで?俺」
天咲「全然見えないよそれ笑」

可愛らしく笑う彼女に、本当のことなんて言えない。
…9人の中で、1番人を殺めてるのは俺やで?
口が裂けても言えへんけど。

「そや、さっきのパンチなんで受け止められたん?」
天咲「んー、昔合気道やってて。それでついた瞬発力のおかげかな?」
「そうなんや、すごいなぁ合気道って」
天咲「親が2人とも忙しかったから。
自分の身は自分で守れって。護身術として習わされてたの」
「やから、ちょっと型が特殊やったんやね」
天咲「てか、なんか見てたら久しぶりに合気道やりたくなったから相手してよ、!」

女の子、ましてや天咲の相手なんてしたくないんやけどな。
でもお願いってこんな目で見られたら、断れへん。

天咲「いくよー!」
「ええよ、」

天咲の動きは圧巻やった。気を許したら体に当たりそうやから、俺も少しだけ本気を出した。
ここに来た時には、憎悪の塊のように喋りも笑いもしなかった彼女が
こんなに生き生きと体を動かせるようになったんは、少しだけ嬉しい。

天咲「シュ…はぁ、疲れたぁ」
「天咲めちゃめちゃ強いやん!」
天咲「はぁ、まあ黒帯だからね。ん、タオル」