そういえばふと思った。
なぜこの人たちは、色を大切にしているんだろう。
リビングもモノトーンな感じが多くてとってもシンプルなのに。

桃「ん?どした?」
「いや、気になったんだけどさ。
どうしてそんなに自分の色にこだわるの?
ほら、ネクタイとか」
桃「あー、…それはね」

少し気まずそうに話す大地。
都合の悪い話だということは私にもわかる。

桃「天咲、俺らの仕事の話して嫌な思いしない?」
「…いいよ、聞かせて」
桃「俺らは仕事の時は色を名前として呼ぶんだ。
そしたら相手に素性がバレないからね。
そのためのネクタイと、アンクレット」
「なるほど、」
桃「それからね、アンクレットにはもう一つ意味があるんだ」

少し声のトーンを落とし、ゆっくり話し始めた。

桃「俺たちは常に死と隣り合わせだから、いつ何時何があってもおかしくない。
ダイヤは固いし錆びたりしないから、そいつの亡骸がどんなに無惨な姿でも、
このアンクレットで判断できるって光成が提案したものなんだ」

あいつ、すげーよなって大地が笑う。
でも少し悲しそうで、目の奥は泣いていた。

「話してくれてありがとう」
桃「おう、」
「…ちゃんと帰ってきてね」
桃「もちろんだよ」
「死なないで」
桃「そう簡単にくたばらないよ。
俺らはどん底だった。でもお前がここに来てくれて、
ここに帰ってくる意味を見いだせたんだよ」

ありがとう。
そう言ってふわっと笑い、頭を撫でた。
この幸せも無限ではないという事実が強く胸に突き刺さった昼下がりのこと。