Yu Side

「お目覚めかな?」
天咲「っわ」

声をかけると、少しだけ俺の声に驚いた彼女。
警戒する眼差しをこちらに向けている。
…そりゃそうか、見知らぬ場所に閉じ込められて
見知らぬ人が目の前に現れてるんだもんな。

「よく眠れた?」
天咲「…」
「あの、信じてくれないと思うけど、君には何もしてないし」

「これから痛い目に合わせるとか、俺たちはそんなことはしないよ?」
天咲「…、俺たち」

小さな声でぼそっと、俺の言葉を復唱した。
俺にしか会ったことない彼女は、アイツらのことはもちろん知らない。
「俺だけじゃなくて仲間がいる。
 というか色々あってここに住んでる」
天咲「…」
「そして君も少しだけここに住むことになる」
天咲「…なぜ?お父さんと、お母さんは…?」
「…その話について、詳しくしたいんだ。
 でもその前に、沢山眠ったからお腹空いてない?」

小さく首を横に振る。

「そっか、じゃあ無理に食べろとは言わないけど、
 俺達の仲間を紹介するから、準備が出来たらそっちに行こう」

少し怯えた彼女が気の毒に思えた。
…俺だって、任されたくて任されてる訳じゃない。あの時の咄嗟の判断だった。
あの時俺が、この子を連れていくと言わなかったらこの子は………。

ベッドに近づき彼女の手を握る。
暖かくてつややかな手だった。