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俺の仕事は、「葬儀屋」だ。
たくさんのご遺体が運ばれてきて、お葬式を挙げる。
死なない人間なんて居ないから、この仕事を失うことは無いし、人の手によって出棺までの作業を行って欲しいと願う人は沢山いるから、AIに奪われる心配も無さそうだ。
だから、自分がずっと続けていける仕事だと思う。
だから始めた。

…というのが表向きの理由。
本当の理由?そんなの簡単なこと。

“人の死んだ顔が好きだから”

自分は小さい頃から、生きている人間の顔を判別することができないでいた。
でも、小学生の頃に亡くなった祖父の顔を棺の外から覗いたら、人生が変わった。
ハッキリと、祖父の顔が見えたんだ。
それから、何度も調べていくうちに俺は死んだ人間の顔なら認識することができると知った。
だから、死んだ人間を無条件で見ることが出来るこの仕事が、好きで好きでたまらない。

そしていつからか、殺人鬼たちの死体の処理を担うようになった。

〈紫ノ宮さーん〉
『なに?また持ってきたの?』
〈これお願いします〉

差し出されたのは、5泊くらいする時くらい大きい見慣れたキャリーケース。
ガチャっと中を覗けば、綺麗な人形のように押し込められた女性。

〈お代はこれで〉
『ん、ありがとさん』
〈あーあと、俺の知り合いに同じような趣味持つやつがいて〉
『ふは、それは悪趣味だねぇ』
〈やっぱり処理に困るらしくって、紫ノ宮さんのこと紹介してもいい?〉
『んー、人にもよるかなぁ』
〈いいやつですよ。ネジ1本外れてるけど〉
『そうじゃなくて、ここに運ばれてくる人。
おっさんとか連れてこられてもテンション上がらないじゃん?』
〈あー、それだったら問題ないと思いますよ。俺と同じで若い女しか殺らないんで〉
『ふーん、それは興味深いな。いいよ、ここおいでって言っといて?』
〈ありがとうございます〉

じゃあ、と言ってキャリーケースを置いて去っていった。
俺はそんな彼の背中を見ながら、金持ち死体も増えるなんて最高だとにやける顔を必死に抑えていた。