Sora Side

再び閉じ込められていた部屋へ戻ると、あの男が立っていた。

「……ただいま帰りました」
《おかえり。君もお疲れ様》
[ありがとうございます。では私はこれで]

そう言って、秘書の彼が出ていく。

《おや?お召し替えをしてきたのか?
スーツなんか着ちゃって、どうした?》
「このスーツに、チップを入れたままだったので…」
《ほう…素敵なスーツだ。オーダーメイドか?》
「入学式の時に、両親にもらいました」
《ふふふ、素敵な家族愛だね。
ご両親も君のことをおもってとっととチップを渡してくれれば良かったのにね。
本当に可哀想なお嬢さんだ》

そう言って、私の頭を撫でる。
今すぐにこの手を振りほどきたかった。

《さぁ、チップをくれ》
「…………分かりました」

チップを渡す手が震える。親のことを蔑んだこいつが死ぬほど憎い。
…………ダメだ私。まだ、今じゃない。
ゆっくりとチップを社長の手のひらに置く。

《っははははは!!!!!いい子だお嬢ちゃん。君のことを沢山可愛がってあげよう》