あたしを撫でる、君の手が好き。


もちろん、その「可愛い」はシロというあだ名のことで、あたしの外見云々ではないとわかっているのだけど。

男の子から言われるその響き自体に、あたしはすこしドキリとしてしまう。


「あ、りがとう……」

それが適切だったのかはわからないけれど、お礼の言葉を口にしたら、富谷くんがぱっと明るい笑顔を見せた。

にこにこ嬉しそうに笑う富谷くんの顔を困惑気味に見つめ返していると、廊下から「富谷!」と誰かが呼びかけてきた。


「富谷!まだこんなところにいる。早くしないと基礎練始まるよ」

富谷くんと同時に振り向くと、部活用のジャージ姿の女子が教室のドアから半分前に身を乗り出している。

他のクラスの女子だけど、可愛くて目立つから校内でよく見かける。名前はたしか……