あたしを撫でる、君の手が好き。


「ねぇ。俺も白山さんのこと、亜聡みたいに『シロちゃん』って呼んでいい?」

「え?」

富谷くんに訊ねられて、どう答えたものかと少し迷った。

富谷くんがあたしをそう呼びたいと思った意図はなんだろう。

単純にクラスメートを呼ぶときのあだ名として?あっくんみたいにペット的な感覚で?それとも、もっと他に意味がある────?

考えてみたけれど、よくわからない。


「あっく……」

本人のいないところで「あっくん」呼びするのはなんとなく憚られて、一旦言葉を飲み込む。


「岸くん、が、あたしを『シロ』って呼ぶのは、ペットの犬みたいだからって理由だよ」

あたしがあっくんのことを呼び直したことに気付いたのか、富谷くんが僅かに首を傾げる。


「ペットみたいとかじゃなくて、ふつーに白山さんのシロでしょ?可愛いと思う」

にこっと笑った富谷くんが、少しの躊躇いもなく「可愛い」なんていうからびっくりした。