あたしを撫でる、君の手が好き。




放課後。部活に行く準備をしていると、富谷くんに後ろから声をかけられた。


「白山さん。これ、ありがとう」

振り向くと、富谷くんが昼休みに貸した英語のノートをあたしに差し出してくる。


「もういいの?」

「うん、大丈夫。午後の授業聞きながら、ちょっとずつ写した。白山さんの字って、綺麗で丁寧だよね。なんか、見た目と内面が字にも表れてるって感じ」

富谷くんがそう言って、あたしに屈託のない笑顔を向けてくる。


「そうかな……ありがとう」

たかが字を褒められただけだけど。こんなふうに真正面から男子に褒められることなんてあまりないから、恥ずかしいし照れくさい。

前髪を指先で弄りながら顔を隠すようにうつむいたら、富谷くんが笑いながら横から顔を覗き込んできた。

え、ちょっと近……

反射的に身を引こうとしたら、富谷くんがにこっと笑いかけてくる。

反応に困りつつも頬を引き攣らせながら笑い返したら、富谷くんの目が嬉しそうに輝いた。