あたしを撫でる、君の手が好き。


「違うよ。これは、『シロ』が俺にお手してくれただけ。シロは俺のペットみたいなもんだし」

それまであたしのことを優しく「るみ」と呼んでくれていたあっくんの態度が変わったのはその瞬間。

顔をあげて怖い顔で睨むあっくんを見て、あたし達をからかっていた男子達が黙り込む。


「行こう、シロ」

あたしを引っ張って立ち上がらせたあっくんが、そのままあたしの手を引いて歩いていく。

そのときから、あたしはあっくんのなかで「るみ」から「シロ」になった。

呼び方が「シロ」に変わってから、あっくんはそれまでほどあたしとは遊んでくれなくなった。

それでもあっくんが完全にあたしから離れていくことはなく。付かず離れずの関係のままに、高校生になった今でも程よく近い距離にいる。

あっくんにとって都合の良い『ペットみたいな』存在として。