あたしを撫でる、君の手が好き。


「そっか。じゃぁ、あたし早く行かなきゃ邪魔だね」

徳永さんと鉢合わせになってしまうのは気まずい。

それに、告白されたらあっくんの気持ちが徳永さんに揺れてしまうんじゃないか……そういう不安がないわけでもなかった。

微妙な胸の痛みや蟠りを誤魔化すために、無理やりに笑顔を作る。


「またね、あっくん」

「シロ!」

急いで教室から出て行こうとすると、あっくんがあたしの手をつかんで引き止めた。

ぎゅっと強く手を握られて、なんとなくその場を立ち去りにくくなる。

振り向くと、あっくんが切羽詰まったみたいな顔であたしのことを見ていたから、ドキリとした。


「春菜に呼び出されたって言ったけど、シロが心配することは何もないから」

「うん」

「また変な勘違いしてない、よな?」

あっくんが不安げな目であたしに問いかけてくる。


「うん……?」

やや曖昧に頷いたとき、廊下をパタパタと走ってくる音が聞こえてきた。

ほとんど人のいない放課後の校舎に、駆けてくる足音が大きく響く。