あたしを撫でる、君の手が好き。


「シロの髪、ふわふわしててばーちゃんちで昔飼ってた犬みたい」

イヌ……

あっくんに撫でられて高くなっていたあたしのテンションは、その一言で一気に急降下した。


「トイプードルの?」

「そうそう」

あたしの髪をぐしゃぐしゃと撫でながら、あっくんがにこにこ笑う。

『シロの髪、ふわふわしててばーちゃんちの犬みたい』

それは昔から、あたしの髪を撫でたあとにあっくんがよく口にするセリフだ。

散々ドキドキさせたあとに、容赦なくあたしの心を崖の下へと突き落としてくるその言葉。

長年言われ続けてもうだいぶ慣れたつもりだけど。たまに言われると、やっぱり少し傷付く。


「あたし、教室戻る。桃佳のこと待たせてるんだ」

頭にのせられたあっくんの手を振り払おうとすると、あたし達のやりとりをじっと見ていた富谷くんと目が合った。

富谷くんと一緒にいる他の男子達も、なんとなくこっちを見て見ないようにしている雰囲気が漂っていて、途端に恥ずかしくなる。