「俺もさ、クラスではあんなだし茜がいじめられてるって知らなかったんだよ。
だけど7月のある日、滅多に使われない西階段でボロボロになってる茜を見つけた。
慌てて駆け寄って理由を聞けば
階段から1人で落ちちゃった、ダサいよね
って哀しそうに笑うんだよ。
腕にも脚にも痣がいくつもあって隠し切れてなかったんだよ」
そう言って長田くんは私のおでこにデコピンを1つした。
あの頃も、彼は「痣隠せてねぇけど。俺の前では嘘つくな」なんて言って、デコピンされたっけ。
長田くんはナルコレプシーという病気を抱えていた。私がその事実を知ったのもその日。
「君が話さないなら俺の話聞いてくれないか?」
彼はそう言って自分が抱える病気のことを話してくれた。
起きていたいのに眠ってしまう。その辛さを話してくれた。
「あーすっきりした!」
長田くんは診断書を見せても信じてくれない教師と違ってキミは純粋だね!と言って背伸びする。
「無理に何があったかなんて話さなくていいから俺に勉強教えてくれね?」
彼がそう頼むから私は肯定の意味を込めて無言で首を縦に振った。
それから放課後に音楽室で勉強するようになった。
音楽室には普段みのりと2人きりだったしお互い好きなことをしているため、クラスメイトに勉強教えたいんだけど、と聞くと快く承知してくれた。



