※※※
「——えっ!!?」
俺は座っていた椅子から勢いよく立ち上がると、驚きに見開かれた瞳で手元の携帯画面を食い入るようにして見た。
そこに写し出されているのは、今しがた届いたばかりの美兎ちゃんからのラ○ンメッセージ。
【今ね、衣知佳ちゃんと一緒に瑛斗先生の学校に向かってるよ〜𓀤𓀠𓀥】
語尾に付いた絵文字の意味は、全くもって謎なのだが……。どうやら、最近の美兎ちゃんのお気に入りらしく、乱用するかのごとく毎度の様にオマケとしてくっついてくる。
そんな謎めいた美兎ちゃんも、激しく愛しい——。
解読不能な絵文字を眺めながら、うっすらと不気味に微笑み暫し惚ける。
(——ハッ! 今は、そんな場合じゃねぇ……っ!!)
俺の学校では今、2日間に及ぶ文化祭の真っ最中である。
そこでサボっ……いや、休憩中に暇を持て余していた俺は、美兎ちゃんとのラブラブなラ○ンのやり取りを楽しんでいた。
——と、その時。何の前触れもなくやってきたのが、このメッセージ。
(い、今!? 今って……、今だよな!?)
急な展開に慌てふためくと、手元の携帯を危うく落としそうになる。
俺がこんなにも慌てているのには勿論、ちゃんとした理由があって。今日はカテキョの日でもなければ、美兎ちゃんと会う予定すら元々入ってはいなかった。
という事はつまり、当然未変装な訳で……。その上もっと最悪なのは、変装グッズすら持ち合わせていないという現状だった。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ……
ッッ!!! なんとかしねぇーとっ!!!)
常備しているワックスと伊達眼鏡の入ったバッグを片手に、教室から飛び出すと一気に廊下を駆け抜ける。
こうなったら、誰かに洋服を借りるしかない。そう判断した俺は、広く長い廊下をキョロキョロと見渡した。
(……っ、どこだ! どこにいる、俺の救世主……っ!!!)
———ピローン
新着メッセージを知らせる着信音が鳴り響き、慌てて手元の携帯を確認してみると——そこには、美兎ちゃんからの新たなメッセージが表示されていた。
【着いたよー! 瑛斗先生、どこにいるの?𓀀𓀠𓀋】
(ファッ……ツ!? もう着いた!!?!!?)
あまりの早さに驚き、その場で軽く飛び跳ねる。きっと、先程のメッセージは学校のすぐ近くからだったのだろう。
全く……こうして君は、いつだって俺をドキドキとさせて飽きさせやしない。
(なんて、刺激的な小悪魔なんだ……っ♡♡♡)
欲を言えば、もっと早くに知らせて欲しかったりはするのだが……。
仕方がない、これも小悪魔のテクニックなのだ。君から与えられるものならば、俺は甘んじて受け入れる他ないだろう——。
【迎えに行くから、ちょっと食堂で待っててくれる?】
それだけ返信すると、再び救世主探しに奮闘する。
(……どこだっ!! どこにいる、ダサ男……っ!!!)
変装にピッタリな服装を探し求め、広い廊下を必死で彷徨う。
だがしかし——流石は三流大学。チャラそうなやつらばかりで、中々お目当てのダサ男が見つからない。
———!!
「……おいっ! そこのダサ——……男! 今すぐ、俺にその服を貸せっ!!」
やっと見つけ出したダサ男に声を掛ければ、ビクリと肩を揺らして立ち止まった見知らぬ男。
「だ、ださ……?」
俺を見て怯えるような表情を見せる男は、文化祭のチラシらしき束を片手に小さく声を上げる。
「お前の着てるその服、俺と交換してくれ!」
「……えっ? ふ、ふふ……、服!?」
「俺には今、その服が必要なんだよ! お前には俺のこの服、貸してやるから!」
「えっ!? そ……っ、そんな派手な服……」
「なぁ……頼むよ……っ!!」
「——っ!?!? ヒィ……!」
必死の形相で目の前の男の両肩を掴めば、顔面蒼白になった男は悲鳴を上げた。
俺は真剣に頼んでいるだけだというのに……。こんなにビビられてしまっては、まるで側から見たら恐喝だ。
「なぁ……いいだろ?」
般若の如く形相で再度必死に頼み込めば、ブルブルと震える顔面蒼白の男は、首を何度も大きく縦に振って答える。もはや、声すら出ないようだ。
(ハァ……。マジ、焦ったわぁ)
目当てであった洋服を手に入れる事ができた安堵感から、ホッと息を吐いた——その時。
———!!?
廊下の先に見えてきた美兎ちゃんの姿に驚き、両目を全開にさせた俺はその場で固まった。
(……えっ!!? な、ななな、なんで、うさぎちゃんがここに……っ!!!?)
食堂とは真逆に位置するこの廊下。何故、居るはずのない美兎ちゃんが、ここに……?
一難去って、また一難。どうやら、俺の可愛い小悪魔ちゃんは休む間も与えてくれないらしい。俺は1人、パニックからその場であたふたとする。
——とりあえず、見つからないように隠れるしかない。
「——えっ!!?」
俺は座っていた椅子から勢いよく立ち上がると、驚きに見開かれた瞳で手元の携帯画面を食い入るようにして見た。
そこに写し出されているのは、今しがた届いたばかりの美兎ちゃんからのラ○ンメッセージ。
【今ね、衣知佳ちゃんと一緒に瑛斗先生の学校に向かってるよ〜𓀤𓀠𓀥】
語尾に付いた絵文字の意味は、全くもって謎なのだが……。どうやら、最近の美兎ちゃんのお気に入りらしく、乱用するかのごとく毎度の様にオマケとしてくっついてくる。
そんな謎めいた美兎ちゃんも、激しく愛しい——。
解読不能な絵文字を眺めながら、うっすらと不気味に微笑み暫し惚ける。
(——ハッ! 今は、そんな場合じゃねぇ……っ!!)
俺の学校では今、2日間に及ぶ文化祭の真っ最中である。
そこでサボっ……いや、休憩中に暇を持て余していた俺は、美兎ちゃんとのラブラブなラ○ンのやり取りを楽しんでいた。
——と、その時。何の前触れもなくやってきたのが、このメッセージ。
(い、今!? 今って……、今だよな!?)
急な展開に慌てふためくと、手元の携帯を危うく落としそうになる。
俺がこんなにも慌てているのには勿論、ちゃんとした理由があって。今日はカテキョの日でもなければ、美兎ちゃんと会う予定すら元々入ってはいなかった。
という事はつまり、当然未変装な訳で……。その上もっと最悪なのは、変装グッズすら持ち合わせていないという現状だった。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ……
ッッ!!! なんとかしねぇーとっ!!!)
常備しているワックスと伊達眼鏡の入ったバッグを片手に、教室から飛び出すと一気に廊下を駆け抜ける。
こうなったら、誰かに洋服を借りるしかない。そう判断した俺は、広く長い廊下をキョロキョロと見渡した。
(……っ、どこだ! どこにいる、俺の救世主……っ!!!)
———ピローン
新着メッセージを知らせる着信音が鳴り響き、慌てて手元の携帯を確認してみると——そこには、美兎ちゃんからの新たなメッセージが表示されていた。
【着いたよー! 瑛斗先生、どこにいるの?𓀀𓀠𓀋】
(ファッ……ツ!? もう着いた!!?!!?)
あまりの早さに驚き、その場で軽く飛び跳ねる。きっと、先程のメッセージは学校のすぐ近くからだったのだろう。
全く……こうして君は、いつだって俺をドキドキとさせて飽きさせやしない。
(なんて、刺激的な小悪魔なんだ……っ♡♡♡)
欲を言えば、もっと早くに知らせて欲しかったりはするのだが……。
仕方がない、これも小悪魔のテクニックなのだ。君から与えられるものならば、俺は甘んじて受け入れる他ないだろう——。
【迎えに行くから、ちょっと食堂で待っててくれる?】
それだけ返信すると、再び救世主探しに奮闘する。
(……どこだっ!! どこにいる、ダサ男……っ!!!)
変装にピッタリな服装を探し求め、広い廊下を必死で彷徨う。
だがしかし——流石は三流大学。チャラそうなやつらばかりで、中々お目当てのダサ男が見つからない。
———!!
「……おいっ! そこのダサ——……男! 今すぐ、俺にその服を貸せっ!!」
やっと見つけ出したダサ男に声を掛ければ、ビクリと肩を揺らして立ち止まった見知らぬ男。
「だ、ださ……?」
俺を見て怯えるような表情を見せる男は、文化祭のチラシらしき束を片手に小さく声を上げる。
「お前の着てるその服、俺と交換してくれ!」
「……えっ? ふ、ふふ……、服!?」
「俺には今、その服が必要なんだよ! お前には俺のこの服、貸してやるから!」
「えっ!? そ……っ、そんな派手な服……」
「なぁ……頼むよ……っ!!」
「——っ!?!? ヒィ……!」
必死の形相で目の前の男の両肩を掴めば、顔面蒼白になった男は悲鳴を上げた。
俺は真剣に頼んでいるだけだというのに……。こんなにビビられてしまっては、まるで側から見たら恐喝だ。
「なぁ……いいだろ?」
般若の如く形相で再度必死に頼み込めば、ブルブルと震える顔面蒼白の男は、首を何度も大きく縦に振って答える。もはや、声すら出ないようだ。
(ハァ……。マジ、焦ったわぁ)
目当てであった洋服を手に入れる事ができた安堵感から、ホッと息を吐いた——その時。
———!!?
廊下の先に見えてきた美兎ちゃんの姿に驚き、両目を全開にさせた俺はその場で固まった。
(……えっ!!? な、ななな、なんで、うさぎちゃんがここに……っ!!!?)
食堂とは真逆に位置するこの廊下。何故、居るはずのない美兎ちゃんが、ここに……?
一難去って、また一難。どうやら、俺の可愛い小悪魔ちゃんは休む間も与えてくれないらしい。俺は1人、パニックからその場であたふたとする。
——とりあえず、見つからないように隠れるしかない。