そんな、私の考えを知っていたかのようにハルバート様は言った。

 「どうもアルグバーン辺境伯は、領地の納税額を二割も上げたと聞く。その理由を伺っても?」

 にこやかに聞きつつも、その声音は有無を言わさぬ圧が込められている。


 まさか、豊かとはいえ二割も上げたら領民の納税額は五割近くなる。
 収入の半分も税に取られては生活が立ち行かない領民が出てきてしまうはずだ。
 元々、国に治めるのが領地の納税額の一割、残り一割五分が領地を治める貴族の取り分。
 そこから家と領地の整備等に使うのだ。
 四割五分の納税では三割五分も領主である辺境伯に入る。
 それは、今までを鑑みれば重税と変わらぬと思われる額だ。

 「いや。昨年は納税額が下回る地域もあり領地運営に差し支えるので、今年度は少し上げることを説明して回ったのだよ」

 叔父の全く分からぬ説明に私はとうとう口を挟んだ。

 「それはどこから来た資料ですか? 昨年は豊かな実りがあり、領地からの税収は領民からの申し出により、いつもより五分も多く納税されました。それは領地運営のために予備費として計上されていたはずです」

 私の言葉に、叔父の顔色は悪くなる。

 「いや、私が引き継いだ時に計算が合わなくってな。資料を作り直したのだよ」

 視線を合わせずに白々しい言葉を続ける叔父様に、フィリップ様が言った。