そんなフィリップ様の言葉に、呆けた顔をしている叔父にハルバート様が言う。

 「もともと、私とシャルロッテは親同士が本人たちの意思が合えば結婚をと考えていた間柄だ。我が家で一緒に過ごして時間を共にするうちに、互いに互いを想う形となったので婚姻証明書を提出させてもらったよ」

 にこやかに、しかし覆ることのない事実を現公爵であるハルバート様に言われては、叔父もなにも言えない様子。

 「しかし、シャルロッテはアルグバーンの後ろ盾がなくばただの町娘も同じ……」

 そんな叔父の言葉に、フィリップ様が言う。

 「私はシャルロッテの後見で、公爵位は息子に譲ったがエリアートン侯爵の爵位はあるんだが。つまり、シャルロッテは侯爵の後見を受けた子女で、身元は明らかで公爵に嫁ぐことになんら問題は無いんだよ」

 叔父のどこかに嫁にやってお金を得ようという、浅はかな考えは通らない。
 もっと領地と領民のことも考えて、堅実に生活していけばいいのに……。

 辺境とはいえ、土地は肥沃で農作物も家畜もよく育つ穏やかな土地だ。
 きちんと管理運営すれば生活に困ることは無い豊かな領地。

 仕事をする気がないのなら、別の貴族家に管理運営してもらった方がよほど有意義だろう。

 このままでは叔父が領地を食い物にして終わりそうで、嫌な予感がしてしまう。
 しかし、爵位のあれこれに私が口を出すことは出来ない。

 辺境は国境の要でもあるから、そのせいで子女に爵位は継げなかったのだから。