そうして、子犬が来て一週間。
 シャルロッテの表情は見違えるように、良くなり笑顔が増えた。

 それは良い、とてもいい。
 彼女の笑みは可愛くて、俺としても癒される。
 彼女の命名した、マロンも人懐っこく、俺にもよくなついてくれている。
 しかも、昼間はしっかりいろいろシャルロッテが教えているのか、躾けもされていて元気はあるが、人の指示にしっかり従う姿勢がある賢い子犬だ。

 今日は早い時間に帰宅すると、シャルロッテとマロンは玄関の少し奥に位置するティーテーブルでゆったりと過ごしている姿が目に入った。

 「ただいま。 今日はいい天気だから、ここで午後のお茶会かい?」

 俺が声を掛けるとシャルロッテは、手にしていた編み物の道具から視線を上げて少し驚いた顔をした後に、にっこりと笑みを浮かべて出迎えの言葉をくれた。

 「おかえりなさいませ、ハルバート様。 今日はいい天気でマロンも遊び疲れた様子だったのでここで少し休憩しておりました」

 マロンも、俺とシャルロッテの話声で覚醒したのか、起きてフルフルと体を震わせた後に、可愛い瞳で俺を見つけると、駆け寄ってきて足にスッと寄って来た。

 俺は、しゃがんで寄って来たマロンの頭を撫でてやる。
 クゥーと甘えた声を出す子犬は、可愛らしい。
 これは、なかなかに癒される。
 この一週間でシャルロッテと共に子犬にメロメロになってしまった。

 「マロン、ただいま。 いい子にしていたか?」

 抱き上げて、その顔を覗き込むとマロンはペロッと小さな舌を出して、俺の頬を舐めてきた。

 「可愛いやつだな」

 そんな俺とマロンのやり取りを、シャルロッテは楽しそうに見守ってくれる。

 「すっかり、ハルバート様もマロンにメロメロですね。 子犬は、とっても可愛いから」

 いや、その嬉しそうなシャルロッテの表情の方がマロンの数倍可愛いのだが!?

 あまり表情をだらしなく緩めないように気を張っているが、最早内心ではシャルロッテが愛しくて仕方なくなっていること。
 そろそろ本人に、思いの丈を伝えてみても良いだろうか?

 そんなことを悩んでマロンを抱えつつ、悶えていたのだった。