対談は無事に終了した。

「今日は、お2人ともお疲れ様でした。雑誌が出来上がり次第、お渡ししますので」

私は、2人にお礼を言った。

「はい、お疲れ様でした。今日は、楽しかったです。ありがとうございました」

かりんさんは、本当に可愛い。

羨ましいなぁ。

私もそんな対応ができたら蓮翔に振り向いてもらえただろうか?

「お疲れ様でした。では、これで失礼します」

蓮翔……。見惚れしまうほどカッコイイ。

「塚本さん、お疲れ様でした。これからお食事でもどうですか?」

「僕は、これから仕事があるので……」

「じゃぁ、改めてご連絡差し上げます。連絡先を交換しませんか?」

「連絡は、秘書の滝野にしてください。では……」

かりんさんも蓮翔の魅力に惹かれてしまったのね。

わかる……。

でも、これ以上見てたらこっちまでヤキモチを妬いてしまうから。撤収。撤収。

まだ目の前で連絡交換するのを見ないだけよかったかな。

私は会社に戻り、今日の記事をまとめた。
ボイスレコーダーに残っている蓮翔の声が聞こえるたびに、切なくなる。
私には、そんな優しい声で話してくれないから。

はぁ……。今日は、疲れたなぁ。

家に帰り、どっと疲れが出た。

夕食は具だくさんのスープにした。そのあと、ゆっくりお風呂に入った。お気に入りの入浴剤を入れて気分も最高。

なのにふと思い出してしまった。
蓮翔は、かりんさんと食事に行ったのかな?
……でも私には関係ない。

「あ~っ。もう、こんなに気にするなんて……」

仕事しよう。
明日までに記事を仕上げないと。
まだ再び、2人の会話を聞きながら記事を書かなければいけない。

「はぁ.....」

この仕事を始めて、初めてかもしれない。記事を書きたくないって思ったのは。

蓮翔の声は、高校の時より少し大人っぽくなっていた。高校の時もみんなよりちょっと低くて、蓮翔の声で「秋帆」って呼ばれるのが心地よくて好きだった。

そんな懐かしい気持ちと今の複雑の気持ちが、入り混じり、ドキドキしながら記事を書いた。



翌日。

らんさんに記事を見せた。

「どうですか?」

「秋帆……。今回は、いい刺激があったみたいね。これでいいわ。あと、写真が揃えばOKね」

「はい。今日あつしさんと確認して、明日にはらんさんに見せられると思います」

「了解。楽しみにしてるわ」

私はディスクに戻り、作業を始めた。
午後はあつしさんと写真確認があるからそれまでに事務処理を終えないと……。
私は仕事に集中した。

仕事に集中してたら、あっという間にランチの時間だ。

私はいちごミルクが飲みたくなって近くのカフェに向かった。

高校の時からいちごミルクが好きな私は、会社の前にあるカフェにいちごミルクがあるのを発見した。だから疲れた時は特に飲みたくなる。
ランチも美味しくて好きなのだ。

「いらっしゃいませ。秋帆ちゃん」

「こんにちは。今日はAランチといつもので」

「了解。いつものところ空いてるよ」

「ありがとうございます」

あ~、お腹すいた。
早く食べたいな。
私は奥の席へ向かった。ここのカフェは人気でランチの時間は、特に混むのだ。でもここの常連になっている私は、店員さんと仲良くさせてもらっている。

「お待たせいたしました。Aランチといちごミルクです。ごゆっくり」

「ありがとうございます」

早速食べますか。

「いただきます」
手を合わせて食べ始めた。

私は食べながら、外の景色を眺められるこの席が、一番好きなのだ。今日は、比較的涼しかった。食事を終えて、ひと息。大好きないちごミルクを飲みながら、私なりの幸せの時間。

さて、午後も頑張りますか。

あっ、そうだ。あつしさんとらんさんにもコーヒーを差し入れしよう。

「あの、持ち帰りでコーヒー2つと、いちごミルクを」

「了解。ちょっと待っていてね」

「はい」

食事を食べ終えた私は、お持ち帰り専用の椅子で待っていた。

「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」

「はい」

「どうぞ、こちらへ」

「ありがとう。行きましょうか」

「はい。ありがとうございます」

この2人は……。

蓮翔とかりんさんだった。

昨日、散々2人の声を聞いていたのだから、よくわかる。今、顔を上げたら私だってバレてしまう。だからこのまま知らないふりをして。


2人は、奥の席に案内された。

何でここで食事?

あ〜っ、デートか。

2人共有名人なのに平気なのかな?

何でよりによって、私の1番お気に入りの場所でなんて……。

あぁ、最悪だ。

「秋帆ちゃん、お待たせ」

「あっ、ありがとうございます」

「はい、また来てね」

「ごちそうさまでした」

私は、足早にカフェから逃げた。