らんさんと颯さんは、美男美女で本当にお似合いのカップルだ。

「綺麗……」

2人を見ていると、私も結婚したくなってきた。

でも、私の好きな蓮翔とは、別れたばかり。新郎側の席を見れば、笑顔で誰かと話してる。

私にあんな笑顔見せたことあった?

どう思い出してもない。

思い出すのは、いつもふざけた態度ばかり。それに高校の時の思い出。付き合ったとはいえ、最近の思い出なんか何もない。あるのは、あの時のキスの感触だけ。

「やっぱり遊びだったんだね」

こうなったら、目の前の料理を楽しもう。

「美味しい……」

料理を食べていたら幸せな気分になった。今は、私のことより、らんさんたちを祝福してあげないとね。

「お前、おもしれぇな」

「どうしてですか?」

「さっきまで、何か考えて悩んでいるような表情をしていたかと思えば、今は料理を食べて幸せそうな顔をしてる。表情がコロコロ変わっておもしれぇ」

あつしさんは本当に面白かったのか、仕事ではみたことのない優しい笑顔で笑った。

見てる私が、ドキッとしてしまう。

「もう、からかうのやめてください」

「からかってねぇよ。本心から言ってるだけ」

「最近のあつしさんってちょっと感じが変わりましたよね?」

「秋帆、それどういう意味?」

「あっ、すみません。気にしないでください」

私は慌てて否定した。
自分を落ち着かせるために近くにあった飲み物を一気に飲んだ。
それが失敗だったのか身体が熱くなってきた。

「お前、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。ちょっと席を外しますね」

私は、外の空気が吸いたくて、歩き出した。扉を開けると、涼しい空気が舞い込んできた。

「あ~、気持ちいい」

火照った身体が涼しい空気のおかげで冷やされていく。私、そんなにお酒弱かったかなぁ。

最近、忙し過ぎて、あまり飲まないから弱くなったのかも?

「大丈夫か?」

振り向くとそこには、蓮翔が立っていた。

「あっ、うん。大丈夫」

そう言うと私は、歩き出した。

「待って……」

蓮翔に腕を掴まれてバランスを崩した私は、抱きしめられるような体勢になってしまった。

「ごっ、ごめん」

離れようとしたが、抱きしめられて離れられない。

「はっ、離して」

「あとで話がしたい」

耳元で囁かれ、ドキッとした。やっと身体が冷えてきたのに、また火照ってきた。

「う、うん。結婚式が終わってからでいいかな?」

蓮翔の顔を見ることが出来なくて、俯きながらやっとの思いで答えた。

「わかった」

蓮翔が私から離れた。

「じゃ、じゃぁね」

私はそのまま、自分の席に戻った。

どういうつもりだろうか?
私はまだ吹っ切れていないのに。
期待してしまいそうになる。

複雑な心境の中、結婚式は終わりを迎えた。