「...。」

彼の目の前には、また。

お医者さまが、どんな夢を見るかと何度か
きかれるので、重い口を開き、
彼はやっと答えた。

まだ夜になると、何度か戻ってくる。

あちら側に。

上を向くと、天井に吊り上げられ、
...目が合うから。

もうそれ以上は、いえない。

...。

まだそれでもと様子をきかれるので、

パチパチと、音もすると言った。

色がみえるのは、そのような火薬が火花となって巻き上がる様子だけ。

それが、いつしか音が消えて花びらとなり、

あの子が来ていると気づくことがある。

現実には、あり得ない。

でも、幻覚にしては出来過ぎた惨劇だと思う。

そう答え、彼は目を閉じた。

また、いつかは引き戻されてしまうのだろうか。

そのような不安は口にしなかったが。

お医者さまは、薬を飲んでほしいと言った。

拒みはしない。

でも、それでも意味がないと彼は思う。

自分の頭の損傷はもう治ることはないのだから。

消えることはないから。