「ね、そこにいるきみは、
だれ?」

...!

「あ、あの私...!」

だめ、焦っちゃだめだ...。

こういうときこそ、

冷静に...。

「花のにおいがね、前とは違うんだ。
だから、きっと...。」

「そ、そうです...。
私、桜です...。」

...分からないよね...。

どうしよう...。

困っていると、今度は向こうから解決策を提示してくれた。

...手を動かしてる。

こちらに差し出しているようにも見えて...。

...恐る恐るその手に触れてみる。

すると、

「おしえて、名前。」

「...ひゃ...。」

結構大胆に手を握られて、

それで、手のひらに指で...。

あ、ゆ、む

って...。

「あ...!
そっか、名前文字で...!」

私はそれから全然冷静じゃなかったけど、

とりあえず、名前は伝えられた気がする。

「さくら...。
あ、憶えてる...。」

「ほんとですか!?」

「委員会、同じだったよね。」

「はい、そうです!」

私はもう...すっかり感激してしまって...。

だって...先輩に初めて私の存在を伝えられたから。

しかも、憶えていてくれたなんて...。