「…何で拓狼さんのところに電話が来るの?」

「そりゃあ、ミッションを共にした仲間ですからねー?」

「俺だってラーメン奢ってあげた仲なんだけど」

「一杯じゃ足りないんじゃないんですか?それに、剣軌くんは彼の目の前でなずなをイジメてるから、ビビってるとか?…あ、今日なずなは?」

「そんなことないけどな。…なずなは、拓狼さんのお母さんとこにいるよ」

「あー。今日はレッスンの日でしたか」



《いつでも、電話して?》



この一言のみを告げて『彼』が電話してくる理由は、ただひとつ。



何か、聞きたいことがあったから。



しかし、『何』を聞きたかったのか。

ひょっとすると、『何か』を知ってしまったのか。



そこは、把握しておくべき部分で。

良からぬ方向に行かないよう、危惧する部分でもあった。




「…まあ、その御父様がこれからいらっしゃるんだから、聞いてみよう?」




すると、噂をすれば姿を現す。

店員に丁重に案内されてテーブルにやってくる、その姿を。



「遅くなってすまんな」

「お久しぶりです、橘社長」