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「…通じませんねぇ…」





何度もかけても、通話の接続音が鳴り響くばかりで、通話が繋がることはなく。

ボタンをタップして接続を諦めた。



「えー。嘘。諦めないで何度もかけ直してよ」

「いやいや、何回もかけ直してますよ…」

「拓狼さん、ちゃんと電話料金払ってる?」

「失礼な、剣軌くん。君ほどではありませんが、僕は一応公務員ですからそれなりにちゃんと稼いでますよ?ホームレス時代の玲於奈のようにクソ貧乏じゃありません」

「一応警部さんだもんね」



やり取りの調子が談笑か何なのかわからない二人がいる場所は、とあるホテルの最上階に位置するバー。

二人での共同の仕事を終えた後に、連れ立ってやってきた。



中心街の夜景が一望できる特別な席で、二人は登場が遅れている来客を待つ。



「…嫌な予感がするんですけど」



手が離せない最中にかかってきた着信。

一時間後に気付いたが、かけ直しても繋がらず。